呼吸器科の奇妙な医者達

 病院だなんてところは非日常的な場所なのだからある程度おかしな人間がたくさんタムロしているのもそれほどおかしな話ではない。しかし、その中でも特筆すべきなのは呼吸器科の医者達である。
 よその病院のことは良く知らないが、女子医科大学では全ての入院患者はほぼ例外なくここで肺機能の検査を行う。まあ体力測定のような位置づけなのだろう。肺機能をどのように検査するかというと、まずは肺活量からだ。掃除機のノズルのようなものを銜えさせられて、そこに飲酒運転検査よろしく息を吹き込む。それを横で介助する医者がいるのだが、問題は彼らだ。
 被験者である僕らがノズルに向かって息を吐き出すと、突然バネが外れたおかしな楽器みたいな大声で「吐いて吐いて吐いて吐いて吐いて吐いて吐いて吐いて吐いて吐いて!」と耳横で絶叫しだすのだ。もう、こっちはキョトーンとするばかりか、おかしくってとてもじゃないが検査どころじゃなくなる。僕にはどう考えても彼が邪魔しているようにしか思えない。おかしな話だ。
 しかし、この愚行は彼だけのものではなく、彼の同僚である女医もまた負けないようなヒステリックなシャウトを披露している。とするとこれは彼らの業界では当たり前のことなのだろか?
 しかも、僕を担当した医師は、検査が終わるとグラフを見ながら「いやーご立派です、こんなご立派な数字はなかなかでませんよ」だなんて言っている。(笑)変なことを褒められるとかえって不愉快である。