ホンダが人の脳でロボットを操作する基礎技術の開発に成功

ホンダが人の脳でロボットを操作する基礎技術の開発に成功


 (株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)と、(株)ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン(HRI)は、共同で新たな「ブレイン・マシン・インターフェイス(以下BMI)」を開発し、人間の脳活動でロボットを操作する基礎技術を発表。
この新技術により、これまでのBMI技術と違い、脳への電極の埋め込みや特殊な訓練なしに自然な脳活動を解読して、リアルタイムに近い速度でロボットを動かすことに世界で初めて成功したことになる。これにより人と機械をつなぐ新しいインターフェースの可能性がひらかれた。

 今回はじゃんけん動作をロボットハンドに再現させる実験を行った。脳活動に伴う血流変化を計測するMRI装置を用いたため、人の動作から約7秒の時間差が生じるが、85%の正答率を達成することができた。外部から脳を計測するには他に脳磁場・脳波などが考えられ、これらの計測法を利用することで今後時間差の大幅な短縮や、BMIシステムの小型化が期待できる。

○実験概要 被験者にじゃんけんの動作をさせ、MRI装置で脳活動に伴う血流の変化を1秒ごとに計測、その画像データから脳活動の運動指令に関与する部分だけを抽出してコンピュータで解析し、じゃんけんのどの動作をしているのかを解読する。その結果をロボットハンドに送り、被験者と同じ動作をさせる。

◆「BMI」とは
 従来のインターフェースが、ボタンやスイッチなどを手足で操作するのに対して、BMIでは種々のデバイスで計測した脳活動に基づいて、機械がコントロールされ、手足などによる操作は不要である。具体的には脳内に埋め込んだ電極や、脳波、脳血流の計測デバイスが用いられる。

◆ATRとホンダが開発したBMI技術の特徴
 このBMI技術は、ヒトへの負担の軽減を重視し、以下のことを基本的なコンセプトとし、誰でも簡単に利用できるBMIの実現を目指し開発をすすめている。

(1)手術が不要であること
 これまでのBMI研究においては、米国を中心に、電極などを脳に埋め込む方式の研究が先行して盛んにすすめられている。一方で、頭の外部から脳活動を計測するBMIで高度な制御が実現されれば、手術に伴うユーザーの負担は不要になる。今回の成果は、その実現の可能性を示すものである。

(2)特殊な訓練が不要であること
 従来のBMIでは、判別しやすい脳活動を起こさせるために、ユーザーの長時間にわたる特殊な訓練が必要であった。例えば「イエスという意思を表す」場合、「イエスという意思」に伴う脳活動が、従来の技術では判別しにくかったため、より判別しやすい別の課題を行わせたときの脳活動で「イエス」に対応させていた。 今回開発されたBMI技術では従来と異なり、別の脳活動に置き換えることなく、人間が動作に取りかかる際の、自然な脳活動を判別することが可能になった。
 実験では、じゃんけん動作を行っているときの脳活動そのものから、グー・チョキ・パーの動作を判別することを実現しており、これは従来技術ではできなかった。このブレイクスルーにより、ユーザーの特殊な訓練が不要となった。