子どもの心発達 解明目指せ

子どもの心発達 解明目指せ
金大、2大学と連携
浜松医大・大阪大と 遺伝子レベルで研究
 子どもの心の発達について国内最先端の研究を行う金沢大学(金沢市)は、遺伝子や人の脳の研究に秀でた大阪大学大阪府吹田市豊中市)や浜松医科大学静岡県浜松市)と連携し、発達障害心的外傷後ストレス障害(PTSD)のメカニズムを探る。子どもの心のひずみが社会問題化する中、原因の解明や適切な支援に役立つと期待される。
金大は「脳の発達・学習・記憶と障害」が、優れた研究として二〇〇四年度の文部科学省二十一世紀CEOプログラムに採択され、補助金を基に研究を続けている。

 これまでハエの神経発達にかかわる七十以上の遺伝子を特定。これと同じ遺伝子が人にもあるという。ネズミから運動の学習に関係する小脳の物質を見つけ、記憶が神経細胞に伝わる際、伝達物質を調整する働きも解明した。これらは精神遅滞や記憶障害、発達障害、PTSDに大きく関与しているという。人でのメカニズムを調べるため今年一月、阪大と浜医大と研究で連携合意した。

 浜医大は、脳の活動が見られる陽電子断層撮影(PET)の研究に優れ、世界から集めた精神疾患がある子どもの脳の標本を持つ。阪大はネズミの脳の遺伝子に欠損を与えた場合のデータを多く保有する。

 ハエ遺伝子で得た成果を人と比較し、遺伝子が人に近いネズミで実験することで、いじめや虐待、恐怖の記憶が鮮明によみがえるPTSD、家族形態と発達障害などとの関係を解明する。近く三大学によるシンポジウムを開き、研究を現場に生かす「子どものこころの発達研究センター」の設置も検討している。

 リーダーの金大大学院の東田陽博教授(脳細胞遺伝子学)は「発達障害がある子どもには、人を認識し、信頼する能力が希薄になっている。人と人の間にある愛や信頼の生物学的基礎を解明することで、子どもの心のひずみを明らかにしたい」と話している。