携帯電話は脳を興奮させる

携帯電話は脳を興奮させる
GSM携帯での通話実験では、15人中12人の大脳の運動皮質が興奮状態を示した。だがこの影響が有害かどうかは解明できていない。(ロイター)
2006年06月27日 15時36分 更新
 携帯電話の電波は電話に最も近い部分の大脳皮質を興奮させるが、そうした影響が有害かどうかは定かではない――。イタリアの研究者らが6月26日、そうした研究結果を発表した。
携帯電話をめぐっては、携帯電話が脳に及ぼす影響やそうした影響とがんとの関連性の有無などについて数多くの研究が行われており、今回「Annals of Neurology」誌で発表されたのも、そうした研究の1つだ。

 業界の予測では、今年は約7億3000万台の携帯電話が販売されると見られており、世界では既に約20億人のユーザーが携帯電話を使用している。

 そのうち、5億人以上はGSM(Global System for Mobile Communications)と呼ばれる電磁場を放射するタイプの携帯電話を使用している。GSM波が脳に及ぼす影響は論議の的となってり、まだよく解明されていない。

 ミラノのファーテベーネフラテッリ病院のパオロ・ロッシーニ博士とその同僚は、被験者にGSM携帯電話を使ってもらいながら、経頭蓋磁気刺激(TMS)を使って脳の機能をチェックした。

 若い男性有志15人に「GSM 900」携帯電話を45分間使ってもらったところ、15人のうち12人で、携帯電話に隣接した部分の運動皮質の細胞が電話の使用中に興奮状態を示し、その後、1時間以内に通常の状態に戻った。

 皮質とは脳の外層のことで、運動皮質は「興奮しやすいエリア」として知られている。磁気刺激が筋肉のけいれんを引き起こすためだ。

 研究者らは、携帯電話の使用が脳に悪影響を及ぼすことが証明されたわけではないと強調しつつも、てんかんなどの症状のある人には、脳細胞の興奮により、何かしらの影響が及ぶ可能性もあると指摘している。

 「日常生活で携帯電話をひんぱんに利用し、電磁波に長時間繰り返しさらされていれば、脳疾患者にとっては有害あるいは有益な影響が及ぶかもしれない」と研究者はリポートで指摘している。

 「こうした状況を実証し、ますます普及が進む携帯電話の安全な使用ルールを提供するためには、さらなる研究が必要だ」とリポートには記されている。

 携帯電話の使用に関する医療研究はさまざまな影響をもたらしている。スウェーデンの研究者らは昨年、携帯電話を長年使うことで脳腫瘍(しゅよう)のリスクが高まる可能性を指摘している。だが日本の携帯電話事業者4社の研究では、携帯電話の電波が細胞やDNAに有害であることを示す証拠は見つかっていない。

 またオランダの衛生審議会が幾つかの研究結果を分析したが、携帯電話の電波が有害であることを示す証拠は見つかっていない。