バイリンガル脳

ここが違う「バイリンガル脳」日英のグループが解明
2006年06月09日
 英会話のとき、ものごとを英語で考えられるほど上達した人は、脳の特定部位が活発に働いていることを、英国と京都大などのグループが確かめた。語学を効率よく学ぶ手がかりにつながるかも知れないという。9日発行の米科学誌サイエンスで報告する。
ロンドン大のキャシー・プライス博士、京大の福山秀直教授らは、英語が達者なバイリンガルのドイツ人と日本人の計35人に、文字を見て即答してもらう課題を与え、脳の活動を機能的磁気共鳴断層撮影(fMRI)などで調べた。

 課題は例えば、パソコン画面に「マス・サケ」「子羊・鶏」などの二つの英単語を連続して示し、両者の関連性の有無を即答する。意味を頭の中で母国語に翻訳せず英語でそのまま考えないと対応できないように、単語を示す時間差はごく短く設定されている。

 課題中の様子をfMRIで見ると、大脳奥にある尾状核(びじょうかく)という場所のうち、その左側が活発に働いていた。ドイツ人も同じ傾向だった。尾状核の働きはまだよく分かっていないが、損傷すると、本来は語学が得意でも外国語で考えることが苦手になり、翻訳してから考えるようになる例が報告されているという。

 福山さんは「尾状核は『英語脳』『日本語脳』を切り替えるスイッチ役ではないか。ここが十分に成熟してから語学を学べば、使い分けがうまくできるようになるかも知れない」という。尾状核がいつごろからうまく機能するかはよく分かっておらず、今後の研究課題だという。

 東京大の酒井邦嘉助教授(言語脳科学)は「尾状核を含む場所は言語機能と関係することが最近分かってきている。言語機能の一部が失われる失語症も、尾状核の問題で起きている可能性がある」と話している。