北大・脳研究 痛み緩和、仕組み解明 末期がん負担軽減期待

北大・脳研究 痛み緩和、仕組み解明 末期がん負担軽減期待  2006/05/08 14:03
 神経の中で痛みを抑える仕組みにかかわる物質が人間の脳のどの部分で生産されているかを、北大医学部の渡辺雅彦教授(神経解剖学)の研究グループが突き止めた。脳内の神経伝達の仕組みの解明につながる画期的研究成果で、末期がん患者の苦痛軽減などに応用できる可能性もあるという。研究内容は、このほど発行された米科学誌神経科学ジャーナル」五月号に掲載された。
神経細胞が互いに結び付く脳内のつなぎ目「シナプス」の周辺では、痛みなどの興奮を伝える神経伝達物質の放出が多過ぎると、この物質の流れを感知して、放出を抑制する機能を持ち、麻薬の大麻の主成分として知られるカンナビノイドが自然発生することがわかっていた。このカンナビノイドシナプスの中にある受容体に働き掛け神経の伝達を制御する。ただ、カンナビノイドが具体的にどの場所でつくられるのかは謎だった。

 渡辺教授らは、脳の中で記憶をつかさどる海馬と、運動機能をつかさどる小脳を解析した。その結果、シナプスの中で、神経伝達物質を受け取る神経細胞の根元などでカンナビノイドが生産され、シナプスの機能を調整していることがわかった。

 末期がん患者の痛み止めなどに大麻を使う場合があるが、幻覚などの副作用が出る問題が指摘されてきた。体内でのカンナビノイドの生産の仕組みが明らかになったことで、今後、脳内のシナプスの機能調整の仕組みがより明確になるとみられ、大麻による副作用が出る理由も解明される可能性が出てきた。副作用がない痛み止めの新薬の開発などが期待できるという。

 渡辺教授は「大脳などでも同様の解析を進め、全容を明らかにしたい」と話している。