おしまいのはじまり、加速す。

 父は本格的に地主稼業を始めるつもりのようで、そして実際に競売物件をいくつか買い始めていた。かなり本気の様子。ただし以前宅建の試験を受けて落ち、その後取得を諦めてしまうような人間には、管理人業すらまともにできるはずもなく、限りなく不安である。実家も抵当に入れそれで借金した元手がたよりのようで、ちなみに僕も保証人の判をつかされている。
 得意げな彼につれられて、当該競売物件を下見する。はしゃぐ父の目が怖くて見ていられない。きっとこれは、おしまいのはじまりに他ならない。片麻痺の僕はいったいこの危機に、どう立ち向かえばいいのだろう?荷が重過ぎる。母は?いったいどうすればいいのだろう?これはもう、逃げるほかなさそうですね。