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抗がん剤の病巣直撃に有効、NECが「極細針」開発

 NECは9日、直径が毛髪の1万分の1という超極細の新素材「カーボンナノホーン」の中に抗がん剤を詰め込み、がん細胞を死滅させることに成功したと発表した。

 ナノホーンは、ナノテクノロジー(超微細加工技術)分野で期待される炭素材の一つで、ノーベル賞の有力候補とされる飯島澄男・同社特別主席研究員が発見した。従来の抗がん剤は正常な細胞も傷つけてしまうが、ナノホーンなら病巣を直接狙うことができ、副作用が少ない新治療技術として注目される。

 NEC基礎・環境研究所などの研究チームは、ナノホーンを約500度で熱して表面に無数の細かな穴を開け、抗がん剤の溶液に浸し、内部に本体の約10%の重量の抗がん剤を詰め込むことに成功した。

 このナノホーンの固まりをがん細胞を培養した容器に入れると、薬剤が少しずつしみ出し、3日後にはがん細胞がほぼ死滅した。

 がんの腫瘍(しゅよう)の血管には、普通の血管にはない直径数百ナノ(ナノは10億分の1)・メートルの穴が開いている。人体に投与した場合、ナノホーンはこの穴を通ってがん細胞だけに集積し、ほかの器官には影響をほとんど及ぼさないとみられる。

 今後、ナノホーンの安全性の検証も必要で、動物実験臨床試験の実施も検討するという。実用化には、まだ時間がかかりそうだ。